『bonbonが好き』から始まった旅
第四章|何気ない日常を彩る
黒川さんとの出会いから1週間後。
私たちは再び瀬戸内海を渡り、
みちおさんの案内で、高知県香美市へ向かい、
草木染めをされている
香織さんのアトリエを訪ねました。
香織さんは、季節の草花や果物、通常廃棄されるものを使って作品を作ったりワークショップをされているテキスタイルアーティストさんです。
香織さんのまわりはいつもカラフルな色で溢れています。
もうひとり、ご一緒したのが
市吉さん。
高知の食材を全国に、全世界に発信するお仕事をされている方。高知の食のスペシャリスト。
『食で人を幸せにする』
bonbonの価値観と共鳴する、素晴らしい方です。
お二方は、『自然の恵みを余すことなく大切に』
間引き、剪定や廃棄される農作物で染色し、
植物の恵みから得た色を楽しみ制作するプロジェクト
『Natural Dyeing Project』
として活動されています。
アトリエに入るとまず目に入ったのが、
大きなガスコンロと、見たことのない大きなお鍋。
壁や天井からぶら下げてあるカラフルな香織さんの作品。
そして、中央の机には事前にbonbonから送っていたエスプレッソの出涸らしを使って、染色テストをした布が並べられていました。
私たちはその布を見て驚きました。
深みのあるグレー
優しいベージュ
温かみのあるゴールド
同じエスプレッソを使って染色しているのに
違う色が何色もできているのです。
不思議に思い、香織さんに尋ねると
「生地に何を選ぶか。
鍋の中で色を入れる時間。
色止めに何を使うか。
草花や果実、野菜に旬があるように
染色にも旬がある。
同じ素材でも、収穫時期によって、できる色が違うんです。」
「bonbonさんのエスプレッソ、出涸らしでこんなに濃い色が出るのに驚きです!」
bonbonのドリンクで提供しているエスプレッソは、岡山県井原市にある三村珈琲さんが独自に焙煎してくれています。
店主、三村さんの想いがたっぷり伝わってきました。
初めて聞く自然の奥深さを知り、
香織さんの話にすっかり聞き入ってしまいました。
素材本来の魅力を引き出す
そして、輝かせる。
パンやお菓子作りにも繋がるなと感じました。
いろんな素材、旬をかけ合わすことで
何パターンもの色が生まれる。
通常なら廃棄されてしまうのに、新たな価値を見出し、
再び命を吹き込む。
楽しくて、わくわくが止まらない。
事前に準備していた自前の服やエプロンを染色できる時間を作ってくれました。
水とエスプレッソの出涸らしが入った大きなお鍋を火にかけ、服やエプロンを入れて、
長い棒でぐるぐるぐるぐる、、、
ゆっくりゆっくり下からすくうように混ぜる。
交代で1時間ほど混ぜる。
真っ白の生地がだんだんと色付いて
エスプレッソの色に染まっていく。
どんな色になるのかな。
わくわくしながら、ぐるぐると混ぜている時間は自分がどんな色でも作れる魔女になったかのようで、とても楽しかった。
その後数時間おいて、色止めの鉄や銅を入れる。
入れた瞬間、水の色がぱっと変わった。
魔法みたい!
生地についたエスプレッソの粉を丁寧に洗い落とし、乾かして完成。
使い古してきた生地が生まれ変わった。
使い込んだ布は表情が出る。
汚れが付きやすいところ
シワが入っているところ
その人の生き様が出ますね。
ーーーーそんな話をしながら帰る時間に。
「どんな色のエプロンを作りたいのかではなく、どんな素材を使って作りたいのかを考えた方がいいかな。
できた時にこんな色になるのか〜。おもしろいな〜て思う。
自然に任せるって楽しいですよ。」
香織さんが嬉しそうに話してくれました。
こうしたい、こうなりたい、
と未来を決めるのではなく、
今この瞬間を楽しむことの大切さ。
自然に身を委ねる
そうすると見えなかった世界が広がる
香織さんがそう言っているようにも聞こえました。
こうしてエプロンに使う染料も決まり、
サンプル作りが始まりました。
第五章 こだわりと本質 へつづく