『bonbonが好き』から始まった旅
第三章|循環する想い 〜WHYからHOWへ〜
2024年初夏
bonbonから車で約3時間。
私たちは徳島県の山あいにある小さな町、
上勝町へと向かいました。
みちおさんに案内されたのは
『ゼロウェイストセンター』
日本で初めて『ゼロウェイスト宣言(廃棄物ゼロ宣言)』をした町であり、驚くことに80%以上のリサイクル率を誇っている。
町内にはゴミ焼却場も
ゴミ収集車も走っていない。
家庭で出るゴミは町民自らがセンターへ持ち込み
なんと43品目にも分別するという。
(日本の一般廃棄物のリサイクル率は、2020年度で約20%、平均分別品目は、約11〜15品目)
日本に、こんなにもごみの問題に対して真摯に向き合い、町民が一丸となって取り組んでいる場所があるのか、、、。
センターを案内してくれた方の話から伝わる、その徹底した姿勢と未来への強い想いに、私たちは言葉を失いました。
それは、単なるリサイクルの域を超え、私たちの消費行動、生き方そのものを問い直すような、深い衝撃。
センターに掲げられたメッセージが
今でも目に焼きついています。
出典元:上勝町ゼロ・ウェイストセンターHPより
わたしたちが一からエプロンを作ろうと思い立った時、まず現状はどうなっているのだろうと疑問を持ちました。
モノで溢れかえる現代社会
大量生産・大量消費・大量廃棄の現状
ファストファッションをはじめとするアパレル産業は
環境汚染産業と呼ばれるほど
地球に大きな負荷を与えている。
様々な現状を知る中で、私たちは強く思いました。
せっかく作るならできる限り環境に負荷をかけない方法で、長く愛着をもって使える素材で作りたい。
そして、私たちのプロジェクトを通して
モノがどのように生まれ、使われ、
そして最後はどうなっていくのか。
その一連の流れを見つめ直すきっかけになれたら、と。
ゼロウェイストセンターで感じた想いを胸に、みちおさんの紹介で、私たちは
JOCKRICの黒川さんのもとを訪れました。
「100の仕事があれば、100通りの仕事着のカタチがある」
そのコンセプトのもと、黒川さんが作るのは、現代の暮らしに溶け込む洗練されたワークウェアです。
人生の大半を占める仕事の時間を
少しでも前向きなものにしたい。
そんな想いが、一点一点に込められている。
着る人の気持ちを高める、そんな温かい作業着が、黒川さんの手から生まれているのです。
広いアトリエには、大きな窓がいくつも並び、四方に広がる美しい山々が一望できます。
黒川さんが窓を開けてくれ、裏を流れる大きな川の力強い水音が心地よく響き渡り、初夏とはいえ、 水分をたっぷり含んだ空気が何とも心地良く感じました。
アトリエの中には、使い込まれたミシンが数台。
壁際には、色とりどりの生地や、これまで黒川さんが手がけてきた作品たちが、飾られていました。
見せていただいたエプロンは、どれもシンプルながら、生地の持つ風合いを最大限に活かしたものばかり。
ワークユースを追求した、機能的なデザインのもの。
たくさんのポケットがついた遊び心たっぷりのもの。
ひとつひとつに、作り手の愛情とこだわりが感じられ、私たちはすっかり魅了されてしまいました。
「着心地が良くて、ずっと身につけていたいと思えるエプロン。だけど、パン屋のハードワークにも耐えられる丈夫な生地って、何かありますか?」
私たちの問いかけに、黒川さんは数種類の布サンプルを持ってきてくれました。
化繊が入っているものは、安価でシワになりにくい。
リネンは、ナチュラルな風合いが魅力だけれど、どうだろうか。
染色に向いている生地はどれだろうか……。
コットン、リネン、そして化繊が混紡されたもの。
黒川さんは、それぞれの生地の特徴を丁寧に説明してくれました。
「ヘンプは、どうでしょうか?」
病気や害虫に強く、農薬や化学肥料を使わずに栽培できる植物。
日本では古くから、丈夫な麻袋などに使われてきたという。
速乾性、そして何よりもその強度に優れている、サステナブルな素材。
それは、まさに私たちが求めていた生地でした。
「ヘンプにします!!」
迷うことなく、私たちはそう答えました。
こうして、私たちのエプロン作りは、
最初の、そして最も重要な一歩を踏み出したのです。
素材が決まり、いよいよサンプルの製作が始まりました。
上勝町での出会いが、私たちのプロジェクトを、力強く後押ししてくれているように感じました。
第四章 何気ない日常を彩る へつづく